エッセイ集

第12話 「伝説の階段落ち」~11月(2003年)

 暑かったり、寒くなってみたりで、気候のほうはすっかり謎めいている今日この頃ですが、皆様は如何お過ごしでしょうか。(注:2003年当時のお話★)
 こんにちは、山野亜紀です。
 「大河ドラマ・武蔵」と今は、NHKのお正月ドラマに当る「大友宗麟(そうりん)」の撮影がなんとか終り、いくらか平穏な日々がやってきました。 (^_^)/
 これまでの忙しさで、少しは痩せたらいいのに・・・。 
 そうは行かないのが世の中ですよね、あぁ・・・。(^_^;)

●さて、これまでの「受け身シリーズのエッセイ」も、とうとう佳境に入ってまいりました。

大友宗麟は、キリシタン大名のお話でした♡

 さて、私こと山野亜紀の体験を通してお送りしている・・・このエッセイ★
 今回は、林先生のとある台詞から始まるのでございます・・・。
「あのさぁ、二間(にけん)って判る・・・?」
 ・・・・・・は?  (・_・;)
 ・・・ニケンって、家が一軒とか二軒とかの・・・?
「違う。距離のこと」
 そう言われて、あぁー・・・。
 例の・・・畳を縦にして2枚分っていう長さのことですよねぇ・・・。 (・_・;)
「うん、そう。高さにして、・・・そうだなぁ。二階くらいの高さかなぁ・・・」
 ・・・へぇー・・・。 (゜o゜)
「その高さから落っこちる事って、出来る?」

時代劇のセットでしたが、まぁ、こんな感じの高さから落ちる訳ですよね。

 ・・・うーむ。 (-“-)
 実はちょっと、高所恐怖症っぽい・・・私なんですが、そんな高さから落ちた事ってのは、一回もやった事ないと思うんですけど、大丈夫かなぁ~・・・。
 でも、ぶわぶわマット(走り高跳びで使っているような)を敷けばなんとか、いけるかも。
 なーんて・・・暢気に構えているようですが、実は私こと山野亜紀は、スタントの経験って一度しかないのですね。(-_-;)

●それは、川に身投げをする・・・というシーンでした。

 橋の上から落っこちるのですが、そこはセットなので、水は50センチ程しか、張ってもらえません★
 折りしも時は、江戸時代。
 もちろん鬘(かつら)を付けて、時代的衣装を身にまとっています。
 ・・・それで橋から落ちた勢いで、前に倒れて、何とか水に沈んで欲しい・・・。

 ・・・人間の体がたかだか、50センチ程度の深さに潜り込めるのでしょうか・・・。
 不安を隠しきれない・・・私でしたが、問題はそれだけではないのです(!)人間の体とは本当に偉いもので、無意識防御本能が働いてしまうことがあります。例えばこの場合、高い所からまず飛び降りるわけですが、その場合にトンと。
 膝を緩めてバウンドをすることで、その衝撃を和らげようとしてしまうのですね。

時代的衣装って、こんな感じ★

 ですがこの場合には、トンとしてはいけません
 何故って、そんな事をしては川に飛び込んだようには見えなくなってしまうから(!)なのです・・・。 
 ・・・結局、3回やって何とかOKを貰えたものの、それ以降は、私がスタントをする事はありませんでした。
 ・・・何故って★ 女性のスタントはたいてい、男性がやってしまうから(!)なのです・・・。
 顔や体付きがバレなければ、それで済んでしまう訳で、なので今回は本当に・・・久し振りに女性が2名だけ、使われることになったとのお話でした。 (゜_゜ )

●さて林先生は、私に試験をしました。

 2メートルの脚立の上に立って、斬られたという流れで落っこちる芝居が出来るのか・・・というテストです。
 とはいえ、脚立の上に立つとなると、私の目から地上までの距離は大体、3.6メートル・・・

ここまで高くはないですけれど★

 そんな所に、生まれて初めて立った・・・私です★ 
 そこは、随分な高さに思われました・・・。
 ・・・そこへ、稽古仲間たちは、やれ脚立を押さえてくれるやら、ぶわぶわマットの上に座布団まで敷き詰めてくれるやらで、これでやれなかったらまず、女の名折れ・・・。 
 ・・・でもでもっ、でもやっぱり、初めての高さなんですぅ~・・・。 (T_T)


 その時、私の脳裏に、第10話「立ち廻りの受け身」のエピソードが浮かびました。
 前回のスタントをした時に、教えてもらったのです。
 もし、高いところが怖かったら、段階を踏むといい
 少しずつ高さを上げていく事で、恐怖心が薄れていくものだから。

●さて、いよいよ本番です・・・。 

稽古場で、必要に応じて使われる緑色のぶわぶわマット★

 このような撮影の場合は、一発OKで決めなくてはなりません。 
 もし、これがもう一度という事になってしまうと、たとえば、顔に付いたり、衣装に付いてしまった血糊(ちのり)の始末など、とんだ手間になってしまうからです。

 今回の場合は、謀反を起こした侍が二人、屋敷へと襲って来るのです・・・。
 表門から馬で乗り付け、何人も斬った挙句に侍たちは階段を登って攻め寄せます。
 そこで二階に居た女性二人も、何とか主人を守ろうとしたものの、あえなく斬られてしまうのです・・・。

階段落ちで有名なのは、「蒲田行進曲」♡

 監督の意向で女性の一人は「階段落ち」で、もう一人は二階の欄干を越えての一階の床へ落っこちで、私は後者を担当する事になりました。

 撮影現場には、ぶわぶわマットが無かったので、スタッフの方がマットレスを何枚か敷いて、その上に毛布をまた何枚か重ねてくれました。
 ここでマットをうず高く積んでしまっては逆に、落ちた・・・という感じが出なくなって(!)しまうので、その辺が辛い所。
 稽古仲間達が私の為に、マットがズレたりしないように押さえて、守ってくれました・・・・・・。
 ・・・もしここで、怖ーいっ、出来ないーっ・・・なんて、言ってしまっては。
 女の、名折れです・・・・・。 (T_T)

●山野亜紀の「落っこち」の結果は、お正月ドラマ・大友宗麟・・・。 (2004年1月4日放送予定)

 謀反を起こした侍たちも、多勢に無勢で、ついには捕らえられてしまいます・・・。
 そして・・・先程駆け上ってきた階段の上から、無残にも突き落とされ、槍に突かれて、壮絶な最期を遂げるのですが、その時に行われていた階段落ちは、林先生の門下生が行ったのですが、それはとても見事なものでした・・・・・・。

 さて私が自宅で、「もしかして今度、階段落ちをするかも知れない・・・」と、家族に話してのですが★
 昭和1ケタ生まれの母は、くすん、くすんと泣いてみせてくれました。 (^_^;)
「お前・・・、あれでしょ?あ、あれ?今ちょっと映った、あれがお前かい・・・?って位しか、画面に映らないんでしょ・・・?」
 ・・・・・・・さすがは、お母さん。 よく分かっていらっしゃる・・・。
 でも親なんだから、少しは喜んでよーっ。 (~_~メ)

●5つ年上の兄などは、大反対。

「お前っ、そんな危険なことは、絶対にやめろぉっ!!」
 ・・・危険と言われると、私も少し怯んでしまいます・・・★
「でも・・・大丈夫だよっ。林先生が付いてるんだからっ」

林先生がデザインした武劇館マーク☆

 それが、最後の砦・・・とばかりに、言い返すと兄は言いました。
「やめろよ・・・そんな・・・階段落ちなんて。・・・だって銀ちゃん大怪我してたじゃないかっ!!」(映画『鎌田行進曲』参照)
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
 林先生にその話をした所、抱腹絶倒!
 ・・・私こと山野亜紀としては、兄に安心をさせてやりたくて、何かアドバイスはないか・・・と訪ねてみたところ、林先生は、おもむろに一言。
「・・・それは銀ちゃんじゃなくって。たしか、ヤスの方だっただろ・・・」
 ・・・・・・映画では。ヤスは、階段落ちをしてその後に。 
 ・・・包帯が、ミイラのごとくグルグル巻き(!)でした・・・。 (-“-)

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